2つの財産

常連のお客様

今日、久しぶりの常連のお客様が来られました。

梅乃葉が今のお店の場所に開店して間もない頃からですから20年近く通ってくださっている御夫婦です。ご主人の運転で、県内あちこち回られるそうで、旅・ドライブ・外食をホントに楽しんでおられました。

時にはお土産を頂くこともあり、奥様が上手に育てられている観葉植物を分けて頂くこともありました。(今、当店に置いてある「観音竹」はその一つです。)

月に1回以上のペースでご来店頂き、当店の梅乃葉定食をいつも変ることなく頼んでくださり、美味しい美味しいと綺麗に召し上がってくださっていました。祭りがあれば、その足を伸ばしてうちまで来てくださり、途中、温泉に入られたり、朝市によったり、ありとあらゆる梅乃葉への周遊プランを楽しまれていた、防府市にお住まいのお客様です。

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訃報

しかし、この度はお連れの方がいらっしゃるようで、様子が違う。直ぐに、ご主人が2ヶ月前に亡くなられたことを聞きました。突然の訃報に言葉も出なかった。

ここ(梅乃葉)に来れば思い出すからと、ご来店を躊躇われたようでしたが、息子さんに促されて連れて来て頂いたとのこと。

泣きながら、ご主人のことを伝えてくれる奥様に胸がいっぱいで、気の利いたことも言えませんでした。

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いつも奥様を気にかけながら、来られる時も帰られる時も笑顔で会釈してくださっていたご主人の顔が浮かびました。

あんなに元気だったのにと、うちの家族やスタッフも寂しさで言葉もありませんでした。

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お客様こそ、うちの資産

この常連のお客様がしばらく来ない時が以前ありました。

それも何ヶ月も来て下さらない。

「どうしたんだろう?」

「うちの料理やサービスで、お気に召さないことが何かあったのだろうか?」

「あの最後に出した献立に問題があったんじゃないか?」

もう、うちはそのことで陰鬱な空気でした。

ところが、ある時何事もなかったようにひょっこり顔を出されて、その理由を、

「きらら博」(2001年)に通いつめていたとのこと、パスポートまで買って。(うち的には胸をなでおろしたものでしたww)

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たくさんの常連のお客様は、うちにとって商売を顧みる大切な存在です。温かく見守ってくださっている常連のお客様もいれば、料理を楽しみに期待してあえて厳しい目で見てくださっているお客様。何も言わず、いつもの料理をいつものように召し上がって帰っていくお客様もいます。

貸借対照表に載ることのない、うちが一番増やしていかなければならない財産・資産です。

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もう1つの財産

同じ訃報で、先日、私の同級生の父親でもあり、漁師でもある方が海で亡くなられました。

須佐は小型船の一本釣りが多く、ほとんどが1人で海に出ます。夏の夜の海面を照らす漁火(集魚灯)があるから明るいイメージがありますが、あれをこうこうと点けたまま船を走らせるわけではありませんので、実際の夜の海は恐ろしく暗いのです。高波で船が引っくり返れば、自分の位置を知らせる明かりも術もありません。そんな、命懸けで漁は行われています。

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亡くなった方は、ベテランの漁師です。須佐の花火大会を始めて行われたのは、この方が漁協青年部部長の時に企画したものだそうです。

訃報を正確に知ったのは、結構日にちが経ってからで、気付こうと思えば気付けたいろいろな出来事があったのに、人の不幸を根掘り葉掘り聞くのが嫌なたちだったのが逆に災いし、まさかその方が亡くなっていたなんて思いもよりませんでした。

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うちにもよくお客さんを連れてこられたり、宴を催されたり、気さくな方で、いつもニコニコして話しかけて下さいました。

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うちが、須佐で商売をさせて頂いていて、ありがたいと思わさせてくれる節々に、こうしたうちにお客さんを実際に連れて来られたり、他の地の知人にクチコミで紹介してくれたり、行列が並ぶ風景を見て、自分たちのことのように喜んで下さる方々がいらっしゃいます。以前だったら、目立てば憎まれ口や陰口が出てくるような風潮もあったのに、知らないところで、陰日向に支えて下さっているのは、こうした地元の方々のおかげだと思っています。

それが、うちのもう一つの財産です。

その両方の財産が、この度立て続けに失われ、なんとも言えぬ悲しさに見舞われました。

お二人の存命中に頂いた、たくさんのことに感謝してご冥福をお祈りします。

ありがとうございました。

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