食材のストックじゃない、“命の予備”。 ── ウニと、イカと、梅乃葉の今年の“海との付き合い方”

活イカようやくきましたね~(T_T)

ようやく、梅乃葉にも今年の「活イカ」が入るようになってきました。 連日、たくさんのお客様が来てくださり、懐かしいお顔、お久しぶりのご家族連れなどに再会できるたび、本当に胸が熱くなります。

特に土日祝日は、2〜3時間お待たせしてしまうことも多く、心苦しくもありながら、皆さん本当にいい方ばかりで……その温かさに、心から感謝しています。 「ここのイカが食べたかったんよ」 「やっと来れました!」 そんな一言が、何よりの励みです。


ただ、そんな日々の裏で、海は明らかに「変わってきている」と感じます。

ケンサキイカ(須佐男命いか)はもちろん、他の魚介も、今までの“旬”や“時期”の読みが通用しなくなってきた。 水温、潮の流れ、餌の状況、すべてが“例年通り”ではなく、 私たちも、「いつイカが来るのか」「どれくらい確保できるか」明言できない日が増えています。

これは全国的にも問題になっていて、もはや“気まぐれ”ではなく、 気候変動が引き起こす新たな海のリズムと、 私たちの向き合い方を考えるフェーズに入ったのだと感じています。


そんな中、今年も実施してきたのが、ムラサキウニの蓄養でした。

(※今年の天然活ムラサキウニの提供は終了しています)

 

この取り組みは、現在提供しているウニとは別に、「海が荒れる日にも、命の営みをつなぐ手段」として始まり、 今年は特に、以下のような新たな成果と気づきを得ることができました。

  • 新たな技術的トライ:餌の改善、蓄養期間の調整による身入りの安定化
  • 新たな漁師との出会い:海と向き合う現場のリアルな視点の共有
  • 実際の海域へのアクション案:海藻や生態系の再生に向けた小さな実験
  • さらに今年は、水槽環境の安定性にも一歩踏み込もうと、空気の流れを工夫してみたのですが、外気温の影響が大きく、思うような水温管理ができなかったことも課題でした。実は、地熱を使った空気供給システムの導入を本気で検討していたのですが、諸々の事情で今年は断念。来年以降、再チャレンジしたいテーマのひとつです。

ただ、それでも収穫はありました。循環水槽の中で、温度・水質・飼料・溶存酸素・日照といった要素を複合的に管理していくことで、現実的な蓄養期間や環境システムの姿がようやく見えてきた実感があります。まだまだ道半ばですが、同じような取り組みをしている方々の中でも、少しずつ独自の手応えを得られつつある手応えを感じています。


これは、「ストック」ではありません。 命を、“つなぐ”ための工夫であり、挑戦です。

来年も、この経験と学びを活かして、 おいしさと安心を届け続けられるように、 静かに、でも、確かに、準備を重ねていきたいと思っています。


お客様と海の間で。 梅乃葉の「店」としての役割も、「海とともに生きる」という意味で変化の中にあります。

もし、また来ていただける日があれば、 その日ご提供できる食材も、もしかしたら、 今年生まれた新たな「海との関係性」の中で生まれたものかもしれません。

またのご来店を、心よりお待ちしております。

山口県の旅先にて天然殻付きの「アカウニ」を食べる体験

土井善晴さんが来られました!

先日、NHK「みんなのきょうの料理」などではおなじみの料理研究家「土井善晴」さんが来られました。

うちの奥さんもスタッフもみんな、先生のレシピで作っているレパートリーを必ず1つや2つ持っているっていう事が凄いですよね。

素敵な方でした。

当店のウニを目当てに、取材で来られたのですが、(いろんなお話を聞けて、私のほうがもっと取材したいくらいでしたが。。。)活ウニや活イカなど、楽しんで頂けました!

教えていただいた中で、一番「そうなんだ!」って思ったのが、こういう生きた活ウニをフランスでも食べているってことでした。

丸っと生で、牡蠣のように氷の上に並べて提供されるそうで、寿司ネタ以外のウニの生食は、日本人くらいしか食べないくらいにぼんやりと思っていましたので、ちょっと驚きでしたw。

 

梅乃葉の活ウニは2008年から

梅乃葉の古いお客様やファンの方にはおなじみなんですが、梅乃葉が天然の活ウニを提供し始めたのが2008年なので、かれこれ、15年くらいになります。

「黒うに」と呼ぶムラサキウニ(3-5月)は、繁殖力も旺盛で、磯焼けの原因の一つとも言われているくらいたくさんいますが、夏のアカウニに関しては深刻な資源減少状態です。

北浦の天然アカウニ」(5-8月)

昔は、バンバン提供できていましたが、当時は価値を知る人もそう多くなく、程よく楽しんで頂ける商品として提供し続けていました。

その頃言われていた、「今後、減ってゆく」だろうという予測の通り、現在は、壊滅的に希少な存在となり、市場価格は5倍以上となって今も上がり続けています。

アカウニの特別感

アカウニの味わいは、本当に別格で、ウニ独特の磯の味わいの中にある優しい甘さ、クリーミーさが、小粒な身の中に包まれています。

対して黒ウニ(ムラサキウニ)は、正に磯の味、ウニらしい味という感じですが、成長の度合い、食べている海藻の種類にも影響を受けます。

なかなか、入荷も厳しく、幻の入荷となっていますが、まだまだシーズン中ですので、ちょいちょい仕入れられる予定です。入荷しましたらお知らせしますね。(活イカ活ウニ入荷情報より

北や南を含めたウニの種類の違いによる味わいの差は、好き好きですし、生態も全然違います。

個人的な意見で大変恐縮ですが、(昔から言ってることなんで)食べ比べてみても、アカウニの味わいこそ世界最高峰だと思っております。

 

梅乃葉の新事業

「キャベツウニ」ってご存知の方もいると思いますが、神奈川県の臼井さんという水産試験場の方が、数年前に世に広めたキャベツで育てるウニの養殖のことです。

キャベツを食べさすっていうのは、昔から知られていて、うちが2008年にはじめた時には、漁師から教えてもらっていたので、うちでも、テレビで騒がれる随分前からキャベツ等を食べさせたりしていたんですね。

おそらく、もっと、大昔に、研究された方がいて、キャベツを食べさすという研究データが水産関係の資料には残っていて関係者の間では知られていた事実だったのだと思います。それが、神奈川の事例にも繋がったのでしょう。

ただですね、15年くらいウニと付き合ってきましたが、育てると言っても黒ウニ(ムラサキウニ)は、比較的強く、生かしやすいのですが、アカウニを生かすのは、本当に難しく、繊細で、今でも、注意をしていないと、死んでしまうことも多いのです。

ウニの蓄養

資源減少著しいこのアカウニを、今後なんとか増やしてゆくために取り組む、梅乃葉の新事業があります。

ウニの蓄養事業です。(海から痩せたウニを集め、水槽設備で、餌を与え大きく育てる養殖事業です)

詳しくは、又、ご報告しますが、磯焼けの解消という藻場再生の取り組みというだけでなく、天然のウニのために養殖ウニを育てるという海へのアプローチです。育てるのはアカウニではなく、黒ウニ(ムラサキウニ)です。(これには様々な理由があります)

多くの支援者・協力企業とともに、そんな事業を既に始めております。

 

お客様と育む梅乃葉の新たなフェーズへ

活イカ事業を始めてから20年。

活ウニ提供開始から15年。

梅乃葉の活イカも活ウニも、お客様とともに育んできた事業であり食文化です。

本年を節目として、新たな養殖(蓄養)ウニを育て提供する事業を、梅乃葉の昔からおられるファンの方々や、今も楽しんでくださっているウニ好きのファンの方と一緒に、この取り組みを育んでゆきたいと思っています。

土井先生からも、「本当になんとかしていかないと!」と海が抱える課題を解決してゆくことにエールを頂き、決意を新たにしているところです。

感謝!

 

活きたウニの味を守るためにできる3つのこと

今年も、活ウニやってます!

生きてるまんまのうにの味。

梅乃葉で提供する北浦の活きウニは、その濃厚な味にこそ特徴があります。

海でとって、その場で食べてたあの味が忘れられないで、

そんな味を提供したいと思い立ったはいいが、

実は、生きたウニを捕ってくれる漁師さんがいないという現実にぶち当たり、

何年も掛けて、交渉して、

ようやく提供することができるようになりました。

 

しかし、提供するようになると、又、色々問題が出てきます。

生きてても、中身が痩せてて食べしろがほとんどなかったり、

色が黒ずんで、美味しそうに見えなかったり、

水槽で、なかなか生きてくれなかったり、

前途多難な、スタートでした。

そのうち、要領を得て、生態がわかってきて、

漁師と話し合いながら、調整を取りつつ、

ウニというものが、どういうものなのかを、お客様に伝えてゆく必要がありました。

 

少しづつ、知られてくると、楽しみにやって来る方が増えてきます。

すると今度は、異常気象や磯焼けなどの、生態系・自然環境の変化が、

ウニそのものにも影響し始め、

同時に、ウニの餌である海藻がなくなってゆくという事態も多くなってきました。

 

少なくなった、餌(海藻・藻場)を求め、小さな芽さえも食べてしまうウニは、

藻場が少なくなる原因とも言われますが、原因はそれだけではありません。

 

ウニを漁獲する漁師が減ると、ウニは一定数増えてゆきますが、生命力(繁殖力)が落ちるとも言われます。

適度に漁獲している状態が、適度に、ウニの繁殖力を維持するためにもなります。

繁殖力の落ちたウニの生殖器(いわゆる可食しているウニの身)は、小さく、当然食べごたえもありません。

 

 

 

現在、梅乃葉でも、夏のアカウニ(本来なら、5月~8月に提供)は3年連続ご提供できておりません。

それというのも、3年前の集中豪雨災害時に要因の一つと言われた、海水温の上昇による、藻場の死滅、

災害の土砂による湾内海底が土砂で埋没。海藻がほぼ、全滅に近い勢いで、なくなりました。

 

餌でもあり、様々な機能を持つ、海中の藻場の大切さは、失って初めて気付きます。

藻場には、大陸棚の生態系を支える機能がある。藻場は魚類や甲殻類など海中の様々な生物に隠れ場所・産卵場所などを提供する。海藻・海草と、それに付着した微細な藻類は窒素やリンなどの栄養を吸収して光合成を行うので、水の浄化や海中に酸素を供給する役割も果たしている。光合成で作られた有機物は、流れ藻、寄り藻といった形で外洋や深海にも運ばれる。細菌や真菌などの微生物も海藻・海草に付着し、海中の有機物を分解して増殖するため、水の浄化に寄与している。

また、海草は地下茎や根で海底を安定させ、酸素を通すことで嫌気性細菌の働きを抑制し、土壌の悪化も防いでいる。

藻場を構成する藻類自体も、貝類を始めとする多様な生物の餌になるほか、付着する微細な藻類や微生物が小型甲殻類や巻貝の餌になり、それを捕食する魚類も集まってくるため生物多様性が高く、日本では古くから漁場として利用されてきた。漁場以外でも、アマモなどは沿岸における農業で、肥料として利用されたこともあった。【Wikipedia

 

もう、こうなるとですね、普通なら、提供やめちゃえばいいんですけどね。

止めませんでした。うにの味を残したかったからです。

そこで、考えたのが、うにの味を残すためにできる3つのことです。

 

①「ウニを食う!」

ウニを食べて頂く、自分でもちろん食べます。その分、捕って頂きます。もちろん、捕れる分だけです。

ある程度捕ることで、繁殖力に刺激を与えてゆきたいと考えています。

少しでも食べて、味を知って頂く機会を提供し続けたいと思っています。

 

②「ウニについて伝える!」

提供し続けて行く過程で、ウニのことを、生態や価値、一般的な流通商品や、本来の味について等、

もっと多くの方に、伝えてゆくことで、興味を示して頂き、いつか又、豊漁となるときには、思う存分食べて頂けるよう、

伝えてゆきたいと思っています。

 

そして、③「育てる!」です。

 

須佐の海を再生する事業「海の森を作る会」

本日、地域の子たちと、やってまいりました。

藻場再生の事業。

地道な活動ですが、植林や、海藻の種を意図的に撒く手法など、

様々な事業を続けています。

 

 

海藻・藻場を育て、

魚介類だけでなく、海のそのものが浄化され、故郷のきれいな海を持続させてゆくために、

子どもたちに、海の生態系、循環環境、藻場の働き、そんなことを体験を通して、知ってもらい、

又、本当に、海の森が生い茂るようになるよう、続けてゆきたいと思っています。

 

感謝!

 

海底の土壌を改善するいくつかのアプローチ。。。須佐海の森を作る会

須佐海の森を作る会にて

先日は役員会でした。

現状の報告とこれからについてです。

 

今年は、ほぼ、活動らしきことができませんでした。

中学校での講演会日程も、728の直後を予定していましたので、

延期そして中止に。

 

当然、災害が起きてからの、海は濁りに濁り、

夏の暑さで、海水温も上昇。あらめ等を含め海藻が枯れました。

そして、更に水害で流出した土砂汚泥が須佐湾内に堆積。

湾内生態系は壊滅的な被害を受けました。

  魚も釣れません。

その現在の様子です。

PC040034-s PC040053-s PC040054-s PC040055-s PC040028-s

[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=WJPLhMj3zb4[/youtube]

撮影協力:スサリゾートダイビングサービス

 

名勝・天然記念物であり、

北長門海岸国定公園内、海中公園とまで指定されている

「須佐湾」の海底の現状です。

 

発想を変えてみよう!

このいつまで待っても流れ出ていくことのなさそうな海底の土壌が

どこかのヘドロ化した河川底の絵ヅラと重なって見えた時、

私の中では、

「これって、どかすことより、土壌として進化させた方がいいんじゃないかな?」

という思いが出てきました。

 

どのみち、海藻から貝類など、餌もなくなり死滅するばかり、

きめの細かい泥・砂が自然に流れて消えていくことなど、なんの根拠も無い希望でしかない。

であれば、多くの微生物が繁殖しするような土壌底質改良ができないものか!?

 

まあ、そんな素人の思いつきですから、

事例もない難しいことかと思いきや、

いやいや、あります方法は。

 

個人的に有望なアプローチを集約すると。。。

ざくっと、アプローチとしては、いくつかありますが、

個人的に有望だと思うのは

1つは、「鉄イオン」の注入。

1つは、「微生物」を使ったバイオ浄化。

この2タイプです。

 

これだけ大きな被害面積がありますので、

期間・面積・費用・許可・実施体制など難問・課題は多いのですが、

復興事業は、議員さんの活躍もあり、農業方面には支援策が次々と示されています。

 

しかし、なかなか示されることのない漁業への復興支援という面でも、

今、可能性のあることを見つけて、提案してゆきたいと思います。

尚且つ、民間で、できるアプローチというのもあります。

練り込んでゆきたいと思います。

 

魚介類の豊富な、元の自然環境に戻すために!

さあ、やりますよ!